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ブラッドボーン解説その5 聖歌隊

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聖歌隊は医療教会が創設されてからしばらく後にできた組織である。メンシス学派とともに医療教会の上位会派である。 孤児院の鍵のテキスト 「聖歌隊」の生所、孤児院の扉の鍵 大聖堂の膝下にあった孤児院は、かつて学習と実験の舞台となり 幼い孤児たちは、やがて医療教会の密かな頭脳となった 教会を二分する上位会派、「聖歌隊」の誕生である 医療教会は獣の病に絡んで親を亡くした子供たちを教育し、また実験の材料とした。出来の良かった子供たちはやがて聖歌隊を組織し教会の頭脳となったのであろう。実験の対象となった子供たちの成れの果ては、おそらくボス敵として登場する星界からの使者である。根拠は2つある。1つは偽のヨセフカの元にNPCを避難させると彼女の実験によって使者の姿にされること(つまりあの青いブヨブヨの宇宙人のような者は元人間である)。もう1つはボス星界からの使者を倒すとカレル文字「拝領」をドロップする。それは医療教会を象徴するカレル文字で、彼らが教会に関係した人間であった証拠である。 ブラッドボーンの背景を製作者の意図にしたがって理解するにあたり、聖歌隊にまつわるアイテムのテキストは読解に注意を必要とする。エーブリエタースを撃破した時に入手できるイズの大聖杯のテキストをよく読んでいただきたい。『「聖歌隊」によれが、イズの地は宇宙に触れている』とある。なぜか聖歌隊からの伝聞調なのである。おかしいとは思わないだろうか?例えばローランの地が獣の病に沈んだことなど、どんなに過去のことであろうと他のテキストは客観的事実が述べられているのである。しかしイズの大聖杯のテキストではなぜか聖歌隊の目線での出来事しか述べられていない。本当に彼の地が宇宙に触れていたかどうかは述べられていないのである。 イズの大聖杯、汎聖杯のテキスト 地下遺跡の封印を解く、汎聖杯の1つ 特に大聖杯は、遺跡の秘部に通じるものだ 医療教会の上位会派「聖歌隊」の礎となった、イズの大聖杯は ビルゲンワース以来、はじめて地上に持ち出された大聖杯であり 遂には彼らを、エーブリエタースに見えさせたのだ (汎聖杯) 「聖歌隊」によれば、イズの地は宇宙に触れている 故に上位者たちは、かつて超越的思索を得たのだと

ブラッドボーン解説その4 処刑隊

装束の聖布の説明から察するに、処刑隊が活躍したのは、まだ教会の白装束や黒装束ができていない医療教会創設に近い頃かと考えられる。 処刑隊の装束のテキスト かつて殉教者ローゲリウスが率いた処刑隊の装束。 後の教会装束の基礎であり、聖布も厚く垂らされている。 殉教者ローゲリウスは言った 「善悪と賢愚は、何の関係もありません  だから我々だけは、ただ善くあるべきなのです」 ローゲリウスの言葉、善悪と賢愚とは。ここで言う「賢さ」というのは上位者へ近づくための知識のことであろう。啓蒙の高さと言い換えていいかもしれない。それと倫理的、道徳的観念である善悪は関係ないとローゲリウスは語る。つまり、上位者に至る知識をより身に付けたからといってそれは必ずしも善い行いとは限らないのである。啓蒙が高いものの徳が高いわけではないのだ。 ではいったいなにが善いことなのか。「穢れた血族」を、悪を処刑することが善い行いなのである。 時は少し遡りビルゲンワース。研究者の一人が裏切り、血を古くからの貴族であるカインハーストの元に持ち出したという。元々血を嗜む文化のあった貴族たちの間でその血は広まり、こうして穢れた血族が生まれたのだという。 彼らを処刑することが善なる行いであり、正しいのである。ローゲリウスの言葉は拝領の探求、上位者へ至る道に疲れた人々に響いたのであろう。しかしその信仰は上位者の知識に触れて狂うのとはまた違った狂気であった。 車輪の狩人証のテキスト 殉教者ローゲリウスが率いた処刑隊 その専用工房が発行した証 車輪は正しい運命である それは狂的な信仰と神秘主義に彩られた秘密の場であり 処刑隊の正義を支える力となった ここで少し考えてほしい。ビルゲンワースから盗まれた血から穢れた血族が生まれたとあるが、カインハーストには既に血を嗜む文化があったという。そして前の記事で述べたとおり、カインハーストの女王アンナリーゼは女王ヤーナムのように赤子を得ようとしている。 誓約アイテム血の穢れテキストより抜粋 女王アンナリーゼは捧げられた「穢れ」を啜るだろう 血族の悲願、血の赤子をその手に抱くために 思うに、カインハーストの貴族たちは地下遺跡の人々を祖先に持っていたのではないだろうか。だとすれば血が持ち帰られたところで、先祖の血が末裔に

ブラッドボーン解説その3 女王ヤーナム

前回の解説の補足的にはなるが、医療協会の発足のきっかけとなった聖体について解説していく。この聖体とは女王ヤーナムである。白痴の蜘蛛ロマ撃破後に姿を現した、白いドレスを纏い腹から血を流した異様な女性。謎多き彼女について語ろう。 街と地下遺跡の女王の名前が同じなのは偶然ではない。彼女を連れてきて聖体として崇めたところから医療教会がはじまり、その名にあやかって街の名前として付けたのだと考えるのがごく自然ではないだろうか。 彼女がトゥメル=イルから連れてこられた経緯は作中で語られておらず不明である。しかしメンシスの悪夢にてメルゴーの乳母前で祈るようなポーズをし、そして腹には大きな傷から出たような血痕と包帯が巻かれてあり、乳母を撃破したのちに一礼して消えることから、彼女は上位者メルゴーの母親ではないかと推測される。 聖杯ダンジョンは儀式で現れる現実とは違う特殊な時空間だと仮定すると(この作品の悪夢と呼ばれるものは特殊な時空間を持つ場所のことである)、固定聖杯ダンジョンのトゥメル=イルの最奥で待ち構えている女王ヤーナムとの戦いは過去の似たような出来事の繰り返しなのかもしれない。 その時の彼女の姿は包帯など巻いておらず腹が臨月の状態のように膨らんでいる。その中身は…上位者メルゴーだったのではないだろうか。 女王ヤーナムは聖体として遺跡から攫われ、孕んでいた上位者の赤子を腹をさばかれ奪われたのである。その赤子はビルゲンワースで上位者になるための実験材料とされたのであろう※。そして自身は医療協会の“聖体”として利用されたのである。なんと虐げられた存在であろうか。彼女がロマ撃破後に主人公の前に姿を表したのは、教会への復讐、あるいは子供を取り返すための駒として見定めたからではないだろうか。 ※ビルゲンワースにある「3本の三本目」などのメモはこのとき得た知見を書き付けたものではないだろうか。また、各三本目のへその緒のテキストの「実際にそれが何をもたらすものか、皆忘れてしまった」というのはそのへその緒の調査からかなりの時間経過があることを示している。それはこの一連の医療教会設立前後のことだとすれば合点がいく。 補足 女王ヤーナムは上位者の赤子を身籠ったことで自身も上位者になっていたのであろう※。死してなお悪夢(メンシスの悪夢や、ロマのいる現実とは違う

ブラッドボーン解説その2 医療教会

前回は全ての組織の祖であるビルゲンワースを読み解いた。今回はそこからローレンスたちが派生させた医療教会を解説していく。(考察というよりはテキストに沿っての解説のほうが適切な表現だと考えたのでタイトルを変更しておく。) 前回のビルゲンワースで触れたように、ローレンス率いる医療教会は地下遺跡から持ち出した(それは簒奪に他ならないが)古代人の死体(彼らは"聖体"と呼ぶ)の血そのものの力を使って上位者になろうとした。大聖堂の頭蓋骨を調べた際のムービーにてローレンスがウィレームから言われる警句「かねて血を恐れたまえよ」の通り、血には恐るべき力が秘められているのである。 アルフレートのセリフ 「血の救い、その源となる聖体は、大聖堂に祀られていると聞いています」 「かつてビルゲンワースに学んだ何名かが、その墓地からある聖体を持ち帰り、そして医療教会と血の救いが生まれたのです」 "ある聖体"を手に入れたことをきっかけにローレンスたちは医療教会を発足させた。そして当時のヤーナム中に蔓延していた灰血病(作中では詳細は不明)の治療として人々に聖血を施したのである。白い丸薬の原料のひとつが これだけだと尊い慈善のように聞こえるが、 医療教会の真の目的は"血を用いて上位者に至ること" である。人々への治療はあくまで手段にすぎないのである。彼らは灰血病の治療を隠れ蓑に大規模な人体実験を行ったのだ。その結果、ヤーナム中に獣の病が広がる下地を作ってしまったのである。 教会の白装束テキストより抜粋 彼らにとって医療とは、治療の業ではなく、探求の手段なのだ 病に触れることでしか聞けない知見があるものだ ところで血の救いの源とされた“ある聖体”であるが、これは女王ヤーナムで間違いないだろう。意外に思う人もいるだろうか。しかし固定聖杯ダンジョンを最後まで攻略した同志であれば納得してくれるはずだろう。根拠が存外に長くなってしまったので次回に解説する。