ブラッドボーン解説その4 処刑隊

装束の聖布の説明から察するに、処刑隊が活躍したのは、まだ教会の白装束や黒装束ができていない医療教会創設に近い頃かと考えられる。


処刑隊の装束のテキスト

かつて殉教者ローゲリウスが率いた処刑隊の装束。
後の教会装束の基礎であり、聖布も厚く垂らされている。

殉教者ローゲリウスは言った
「善悪と賢愚は、何の関係もありません
 だから我々だけは、ただ善くあるべきなのです」


ローゲリウスの言葉、善悪と賢愚とは。ここで言う「賢さ」というのは上位者へ近づくための知識のことであろう。啓蒙の高さと言い換えていいかもしれない。それと倫理的、道徳的観念である善悪は関係ないとローゲリウスは語る。つまり、上位者に至る知識をより身に付けたからといってそれは必ずしも善い行いとは限らないのである。啓蒙が高いものの徳が高いわけではないのだ。
ではいったいなにが善いことなのか。「穢れた血族」を、悪を処刑することが善い行いなのである。
時は少し遡りビルゲンワース。研究者の一人が裏切り、血を古くからの貴族であるカインハーストの元に持ち出したという。元々血を嗜む文化のあった貴族たちの間でその血は広まり、こうして穢れた血族が生まれたのだという。
彼らを処刑することが善なる行いであり、正しいのである。ローゲリウスの言葉は拝領の探求、上位者へ至る道に疲れた人々に響いたのであろう。しかしその信仰は上位者の知識に触れて狂うのとはまた違った狂気であった。


車輪の狩人証のテキスト

殉教者ローゲリウスが率いた処刑隊
その専用工房が発行した証 車輪は正しい運命である

それは狂的な信仰と神秘主義に彩られた秘密の場であり
処刑隊の正義を支える力となった


ここで少し考えてほしい。ビルゲンワースから盗まれた血から穢れた血族が生まれたとあるが、カインハーストには既に血を嗜む文化があったという。そして前の記事で述べたとおり、カインハーストの女王アンナリーゼは女王ヤーナムのように赤子を得ようとしている。


誓約アイテム血の穢れテキストより抜粋
女王アンナリーゼは捧げられた「穢れ」を啜るだろう
血族の悲願、血の赤子をその手に抱くために


思うに、カインハーストの貴族たちは地下遺跡の人々を祖先に持っていたのではないだろうか。だとすれば血が持ち帰られたところで、先祖の血が末裔に渡っただけのこと。それを穢れた血族だというのは「聖体」を穢れと呼ぶのと等しいのではないか。

そういった矛盾に目を瞑ってでも彼らには"倒すべき悪"が必要だったのであろう。啓蒙を高めることが困難な者や、そもそも上位者になろうとすることに懐疑をもってしまった者たちが宗教的救済を求めて行動を起こした結果、このような矛盾を孕んだ狂気の集団と化してしまったのかもしれない。
処刑隊の誓約のカレル文字「輝き」は目を三角形で覆ったような形である。ちょうど彼らの象徴の一つであるアルデオを被ったような。処刑隊は見えぬもの(上位者)を見ようとしたのではなく、目を覆い見ることを止めた者たちなのである。(2018 8/30追記)


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