ダークソウル考察 すごいぞカリム①信仰編

ダークソウルには数多の国が登場するが、筆者がとくに注目したいのがカリムである。長い時を経て多くの国は没落したりその名が失われたり正しく伝わっていなかったりする。例えばシリーズの代名詞上級騎士の装備で知られるアストラは3の時点では亡国とされ没落してしまっていることがテキストからわかる。


3 アストラの直剣

亡国の名で呼ばれる上質の剣。
没落したアストラは、かつて貴族の国であった
この武器はその名残、遺産であるのだろう


「貴族の国」というのは無印のキャラメイク時のテンプレートの一つに「アストラの貴種顔」というものがある。整った顔の金髪のキャラクターとなっている。



一方カリムはいまだ健在のようで、宗教論争を起こしていたり火防女になる使命を与え聖女イリーナとその騎士イーゴンをロスリックに送り出している。


3 ロイドの盾の指輪

白教に仕える騎士に与えられる指輪
主神ロイドの階級の盾を象っている

HPが最大のとき、カット率を一時的に高める

だが白教のロイド信仰は、今や廃れて久しい
カリムの司祭たちは声高に主張する
ロイドは傍系にすぎず、主神を僭称したのだと


ちなみに無印ではキャラメイク時に「カリムの陰気顔」、3では「カリムの坊主顔」のテンプレートがあり、信仰に篤いが暗さを感じさせる雰囲気がある。カリム人は「クックック…」と独特の笑い方をする。女性のイリーナも例外ではなくイベントの進行によっては彼女のカリム笑いを聞くことができる。ただ、無印の教戒師オズワルドだけは特別すぎる。「ヒャーッハッハ!」の絶叫に皆一度は驚いたことだろう。


聖女レア一行に「注ぎ火」を探す使命を与えたソルロンドは3では名前すら登場しない。最初の火の衰えとともに白教信仰が盛んだった国が衰退したように思われる。カリムもまた白教を信仰する国であるが、同時に女神信仰も行われている。無印でロートレクが女神フィナを、オズワルドが女神ベルカを信仰し、そして3ではイーゴンが女神クァトの使徒モーンを象った鎧を纏った。


フィナは定かではないが、ベルカが非常にすぐれた魔術師だったことや(過去記事参照)クァトの伝承から、彼女らは神族以外の実在した人物なのだろう。女神信仰、これがカリムが健在である重要な要素の1つと考えられる。

罪の女神ベルカへの信仰はベルカの刺剣が邪教属性をもつことから白教に反するものであるとわかる。
(ベルカの正体は謎が多く、無印のベルカのタリスマンのテキストに彼女の黒髪そのものだと書かれ、3で登場した白髪のタリスマンのテキストに髪の主は異形の娘であり混沌の魔女たちの一員だったとある。そのためベルカもイザリスの魔女と関連があるのかもしれないが彼女は魔術師であり呪術の影が一切見当たらないことも気にかかる。ここでは触れないでおこう…)

ではクァト信仰はどうだろう。3の奇跡・治癒の涙のテキストには「カリム大司教の使徒モーンが伝えた奇跡」とあるのでおそらくクァトはカリムの白教の聖女であったのだろう。だが女神と崇められるようになってもやはり闇を本質とする人間。クァトの鈴は闇の奇跡に適した触媒になってしまった。カリムの聖職者たちはやり手なのかその事実を隠して信仰を続けているようである。


2 クァトの鈴(抜粋)

闇術専用の触媒で奇跡には使えない

(2では奇跡や魔術、呪術のほかに闇術という専用のカテゴリがあったため)


3 クァトの鈴

女神クァトの加護を受けた聖鈴
カリムでも一部の聖職者が持つもの

奇跡触媒としては珍しい理力補正を持ち
偶然にも闇に近い奇跡と相性がよい
大主教の名において、それは秘匿され
また固く許されていない



ところが白教はグウィンら神族のまやかしであると考える者が出てきた。「世界蛇の娘」だと名乗る三姉妹が黒教会を創設し、亡者の国ロンドールが生まれている。3で姿こそ現さなかったが闇撫でのカアスはまだ暗躍していたのである。彼女たちがカリムの者かは定かではないが、ロンドールのアイテムに無印でカリム産だったものとベルカにまつわるものが多いのは確かである。紹介していこう。


まずはユリアの装束から。不死教とオズワルドの記事でも述べたが3姉妹の次女ユリアの装備が喪服のような黒のドレスに鴉のような嘴の仮面であること、そして彼女がオズワルド同様に卓越した剣士であることは偶然ではないように思われる。


3 嘴の仮面

ロンドールの黒教会、3人の指導者たちの装束
嘴の仮面は次女ユリアのもの

彼女たちは世界蛇の娘であり
黒教会の創始者としても知られている
すなわち亡者の救い手として



次にロンドールが秘宝とする解呪石のテキストを無印と3で比較してもらいたい。(コーさん、ヒョーコさん、資料提供ありがとうございます)


無印 解呪石

半ば頭骨が溶け込んだ灰色の石
カリム伯アルスターの秘宝の1つ
呪いの蓄積を減らし、呪死状態を解除する

人は呪いに対し無力であり
それを減らすことしかできない

解呪石もまた、呪いを逸らす先でしかなく
それは人、ないし人だった何かなのだろう


3 解呪石

小さな頭骨が溶け込んだ灰色の石
呪いの蓄積を減らし亡者状態を解除する

亡者の国ロンドールの秘宝であり彼らが自らを偽るときに使用す
ときには、その偽りを自分と信じ亡者を捨てる裏切り者もいるという


なぜカリムの秘宝がロンドールでも秘宝として扱われているのか。



黒教会を離れた三姉妹の一人、エルフリーデの周辺からもカリムの影響が色濃く感じられるので整理していこう。

三姉妹の長女エルフリーデの騎士であったヴィルヘルムは、黒教会を離れる彼女から主従の終わりを示す別れの品としてオーニクスブレードを拝しているが、それでもなおアリアンデル絵画世界で彼女の傍に侍っている。まるでイリーナとイーゴンに見られるカリムの騎士が生涯たった一人の聖女に仕えるしきたりのように。そして彼は奇跡・沈黙の禁則を使用する。それは無印で罪の女神ベルカの奇跡だったものである。「卓越した剣士」というのもベルカの刺剣のテキストにみられた言葉である。


3 沈黙の禁則

ロンドール黒教会の奇跡
自分も含め、周囲にいる者の魔法を封じる

黒教会の者たちは、皆卓越した剣士であり
ロンドールの沈黙はいつも彼らと共にある
そして剣だけは、決して裏切らない


絵画世界でかつての名を捨てフリーデとなった彼女からは、絵画世界の思い出にと霜咬みの指輪をもらうことができる。咬み指輪は無印のころにアルスター公が作ったカリムに伝わるものである。


霜咬みの指輪

カリムに伝わる「咬み指輪」のひとつ
冷気耐性を高める

それはもう、フリーデの指を飾ることはない
絵画とその冷たさが、彼女の故郷なのだから


アリアンデル絵画世界は無印のエレーミアス絵画世界を教父アリアンデルが自らを鞭打った血で修復して繋ぎとめている世界である。霜咬みの指輪のテキストにフリーデの故郷とあるのは絵画世界の冷たさや静けさが心に安らぎをもたらしたためか。ロンドールがベルカ信仰を礎の1つとしているため彼女が郷愁を感じたからか。あるいは彼女もサリヴァーンのように絵画世界から来た者で文字通りの故郷だったのか。




アリアンデルの薔薇(抜粋)

絵画の修復者たるアリアンデルは
それが血で描かれていることを知っており
それを守るためにまた血を用いた



以上よりロンドール建国の下地の1つにカリムが影響を及ぼしたことが十分に考えられる。神族ではない者への信仰は邪教を生み、闇の奇跡との親和性を生み、それは少しづつ最初の火の簒奪を企てる亡者の国ができるきっかけとなっていった。

次回はアイテムからカリムを見ていきたい。カリム産のアイテムは多いのである。ものづくり大国カリム、ご期待ください。

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