ブラッドボーン解説その7 メンシス派とオドン

これまでの解説を読んでくれているという前提で話を進めさせていただく。今回は作中随所に置かれたメモを通して、メンシス派の目的について前回より深く語っていきたい。それはストーリー全体の理解にも繋がるだろう。





・オドンの地下墓のメモ

「ビルゲンワースの蜘蛛が、あらゆる儀式を隠している
見えぬ我らの主も。ひどいことだ。頭の震えが止まらない」

このメモを読んだ時点では、とくに初見では何のことかさっぱりわからないだろう。が、おそらくはメンシス派の人間が書いたものである。ビルゲンワースの蜘蛛とは白痴の蜘蛛、ロマのことで、見えぬ我らの主とは上位者のことだろう。この上位者については後ほど詳しく解説する。


・隠し街ヤハグル(地下牢)のメモ

「狂人ども、やつらの儀式が月を呼び、そしてそれは隠されている
秘匿を破るしかない」

ヤハグルの人さらいに捕まった反メンシス派だったのであろう人間によるメモ。赤い月はロマが隠しているが、メンシスの儀式を止めさせるにはロマの秘匿を破る必要がある。つまりロマを倒して赤い月をあらわにしなければならないのだ。


・ビルゲンワースのメモ

「赤い月が近づくとき、人の境は曖昧となり
偉大なる上位者が現れる。そして我ら赤子を抱かん」

「あらゆる儀式を蜘蛛が隠す。露にすることなかれ
啓蒙的真実は、誰に理解される必要もないものだ」


メンシスの儀式で赤い月が呼ばれると同時に上位者が現れる(もしかしたら上位者を呼ぶと月が赤くなるのかもしれないが判別はできない)。そしてカインハーストの血を引く女性は上位者との赤子を孕むのである。



ここで再びオドンの地下墓のメモについて考えよう。「見えぬ我らの主」とは何者なのか。ここで思い出してほしいのがカレル文字「姿なきオドン」である。


姿なきオドン

人ならぬ声の表音となるカレル文字の1つ
上位者オドンは、姿なき故に声のみの存在であり
その象徴となる秘文字は、水銀弾の上限を高める
人であるなしに関わらず、滲む血は上質の触媒であり、
それこそが、姿なきオドンの本質である
故にオドンは、その自覚なき信徒は、秘してそれを求めるのだ


そう、見えぬ我らの主とはオドンなのである。メモがあったのはオドン教会であり、示唆の1つであるのかオドン教会にはメンシスに大量にいるアメンドーズが1匹張り付いている。

追記
オドンはメンシス派が儀式で呼ぶ上位者のうちの一体としておいてもらいたい


さてオドンの本質の「触媒」とはどういうことか。人(と上位者と獣)の境が曖昧になる赤い月のときにカインハーストの血を引く女性に上位者の子供を授ける、つまり本来ならまじわらない人間と上位者を結びつける働きをするのである。メンシス派は儀式により上位者の働きを活性化させその赤子を穢れた血をもつ女性に宿そうとしていたのである。

ちなみに医療教会もアデーラら「血の調整」を施した血の聖女を作ってはいたが、赤い月を迎えても彼女には赤子は宿らなかった。赤子が宿ったのは娼婦アリアンナと偽ヨセフカらカインハーストの血を引く女性だけであった。



余談

これは想像の域の話であるが、なぜヤハグルにはトゥメルの鐘を鳴らす女や人さらいが多く登場するのかと考えた。カインハーストの血は本来ビルゲンワースから持ち出された「聖血」、つまり地下遺跡の聖体の血である。人ならぬ人であるトゥメル人の女ならば上位者の子を孕むことができる。もしかするとメンシス学派は教会関係者のほかにトゥメルの末裔たちを集めていたのかもしれない…。


ヤーナムの影(※)を禁域の森に派遣し、ビルゲンワースに立ち入ることを阻んだのもメンシス派であろう。なぜならあれらはミコラーシュを倒した後にも遭遇するモブ敵と同じである。ゲールマンにはただ狩りをすればいいと言われるのだが、我々は狩りを通じて知らず知らずメンシス派と戦っていたと言えるかもしれない。もっとも、3本目のへその緒を3本集めれば狩人たちを操ってきた黒幕である月の魔物にまみえることができるのであるが。




さらに余談

ところで、悪夢の中でたった一人でゴースへの呼びかけを、しかも敵方のビルゲンワースのロマのように瞳を授けてくれと叫んでいるミコラーシュはメンシス学派の中でもかなり異端だったのではないだろうか。


※ヤーナムの影の中身は蛇のような姿だったが、悪夢の中の個体は蛇化しない。
メルゴーの乳母は攻撃すると血ではなく黒い飛沫のようなものを出し「ガオン」という金属を殴ったような独特の音がする。これはさまよう悪夢(結晶トカゲ的な存在)やカインハーストの悪霊も同様なのであるが、実体がなく幻のような存在だということなのだろうか…


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