ダークソウル考察 「不死教」と教戒師カリムのオズワルド

ダークソウルシリーズ内に登場した宗教といえば白教であるが、言葉のみ1度だけ出てきた不死教というものがある。今回はこの不死教と、3で登場した黒教会について解説していきたい。

命からがら北の不死院から脱出し、祭祀場へ到着。そこで心折れた戦士(通称青ニート)に言われるまま鐘を鳴らすために階段を登ったその場所が「城下不死教区」である。あまりにも序盤の地域なので、初めて訪れたときはその名前に違和感を抱くこともないかもしれない。城下というのは、おそらくセンの古城のふもとに作られた(もしくはアノールロンドであるがどちらかというのはここでは重要ではない)のであろうが、改めて考えていただきたい。どうしてそこは白教区ではなく不死教区という名前なのかと。

まず、白教は王グウィンの叔父であるロイドを主神とする、ダークソウル内での主要な宗教である。アストラやカリムなど、各国で信仰されており、とくにソルロンドは信仰が盛んなようである。グウィンら神族を崇める宗教であり、火の陰りに従って現れた不死人は不浄とされている。
その不浄であるはずの不死の名を冠した不死教とはなにか。ダークソウル無印では直接語られることはないが手がかりはいくつかある。ここではカリムのオズワルドと彼が扱う品物から紐解いていこう。
鐘のガーゴイルを倒した後にひょっこり登場するオズワルドだが、彼が身にまとう装備は教のものではなく黒の聖職衣である。


黒の聖職衣
罪の女神ベルカの教戒師がつける聖職衣

教戒師の衣装は全て黒で統一されており
ベルカの神秘の力から
あらゆる魔法に耐性があると言われている


彼が信仰する罪の女神ベルカはシリーズを通して謎の存在であるが(3で不死街の洞窟に像があったのみ。長い髪をしている)、オズワルドが販売する魔術「沈黙の禁則」などのテキストからその正体が垣間見れる。


沈黙の禁則
黒髪の魔女ベルカの伝える秘儀
効果範囲内ですべての魔法が使えなくなる

罪の女神ベルカは異端であるが
古今あらゆる秘儀に通じており
神々の中でも強い影響力を持つと言われる


このテキストより罪の女神ベルカは白教の信仰対象ではなく異端の神であるとわかる。何より、魔女であるのに女神として崇められている異質な存在である。彼女の異質さを象徴するものにベルカのタリスマンがある。


ベルカのタリスマン
神の奇跡をなす触媒
罪の女神ベルカのそれは彼女の黒髪であり
信仰によらず理力を奇跡の糧とする


ソウルシリーズを通して、魔術は理力、つまり勉学の末に得られるものであり、信仰の高さにより起こせる奇跡とは別物である。2つは本来、相容れないはずのものだとされているが、その2つが要求される事象が存在する。ダークソウル無印の時点ではまだ「邪教の」という属性名しか登場しないが、2においてより明確に描かれるそれは闇である。闇は理力と信仰の両方を必要とするのである。

つまり女神ベルカの信仰は白教からすれば忌むべき闇の邪教なのではないだろうか。そしてそれこそが「不死教」の正体なのではないだろうか。アノール・ロンド内の宝箱から邪教のクラブという武器が拾えるのであるが、我々プレイヤーはそのずっと前、物語の序盤に邪教の存在に触れていたのである。


オズワルドの得物であるベルカの刺剣は邪教属性がついており、彼の装備と同じものは忌み者たちの居場所であるエレーミアス絵画世界にて拾うことができる。そして絵画世界には「ベルカの鴉人」という数多の鴉人間がいる。3に登場する黒教会の指導者の一人、ロンドールのユリアが鴉を模した嘴の仮面をかぶっていることと、オズワルド同様に彼女も卓越した剣士であることはきっと偶然ではない。黒教会はベルカ信仰を少なくとも祖の1つとしているのではないだろうか。


無印 ベルカの刺剣
罪の女神ベルカの教戒師が身に帯びる
象徴的な意味合いの強い刺剣

だが、それは単なる象徴に留まらず
魔力を帯びた刀身と、独特の剣技により
教戒師はまた卓越した剣士でもある


3 
闇朧(抜粋)
ロンドールのユリアの得物
見えぬ刀身を持つ魔剣

黒教会の指導者の一人であるユリアは
卓越した剣士であり
この一振りで百の騎士を葬ったという



では教戒師であるオズワルドは一体、何を教え戒めていたのだろうか。まずベルカの仮面のテキストから教戒師がどういった存在なのか知る必要がある。


無印 ベルカの仮面
罪の女神ベルカの教戒師がつける仮面

罪人の懺悔を聞き、反省と救済を促す教戒師は
俗な市井と隔絶した存在であるはずで
仮面はその象徴である


オズワルドは他NPCと敵対した場合に関係を修復する免罪を行ってくれる。断罪するのみではなく、反省を促し救済してくれるのである(対価としてソウルを要求されるが、これも罰の1つであろう)。また闇霊に侵入され敗北したときに相手を別の闇霊に侵入されやすくさせる告罪符も扱っている。


因果応報
黒髪の魔女ベルカの伝える奇跡
短時間に大ダメージを受けると、自動的に反撃する

罪とは罰せられるべきものであれば、
罪を定義し、罰を執行するのが
罪の女神ベルカの役目であろう


教戒師オズワルドはベルカの代行として罪を定義し罰を与えていたのではないか。ベルカの仮面は罪人から距離を取り神の側から罰を与えるための装置である。「すべからく罪は私の領分だよ…」とは彼のセリフの1つである。
ここで大切なのは、罰の後には救済が用意されていることである。ソウルを支払えば敵対関係が解除される、告罪され他の闇霊に侵入され敗北すれば罪人度が低下するなど、かならず救済が用意されているのである。罰が執行されれば罪は消えるのである。

白教で不死人が不浄とされるのは、人間の本質である闇が隠しきれなくなるからである。しかしそれは最初の火の陰りのためであり、不死人そのものに非があるわけではないのではないか?いや、たとえ不浄の罪があったとしても、なんらかの罰を受けることで救済が得られるべきではないか?オズワルドはこういったことを教え、戒めていたのかもしれない。また、不死人に救済が用意されているとすれば、そのことが邪教とされた大きな理由となり得るだろう。火の時代の存続のためには、闇は絶対に許されてはならぬ存在なのだから。

人間の本質が闇であること、そしてそれはグウィンら神族にとって不都合であり、ゆえに罪とされていること。この問題は2でより明確に語られている。2のDLCのタイトルは「The scolar of the first sin」(原罪の探求者)であり、物語の主題として取り上げられている。無印では深く描かれることのなかったベルカ信仰であるが、それは2の火継ぎの懐疑者アン・ディールや、3の火継ぎを拒否するロスリック王子、火の簒奪を企てるロンドールの黒教会などの重要な下地となっているのである。



まとめ

ベルカ信仰のことが不死教じゃないかなぁ

オズワルドは不死人に罪と罰、そして救済を説いてたんじゃないかなぁ

白教では人間の本質が闇とされていて、それは罪かもしれないけど、救済があってもいいじゃないと考えた人もいたんじゃないかなぁ。きっとそこからもう火は継がなくてもいいんじゃないかなと考える人も出てきたと思うよ。

でした

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