ダークソウル考察「涙」その2

ダークソウル無印で魔術だった「治癒」が2では効果は変わらず奇跡「治癒の祈り」として登場している。おそらくこれは2という作品の、最初の火継ぎから長い時の経過とロードランから遠く離れた地ドラングレイグが舞台という設定が関わっている。時代と場所が移り変わればものも変わり行くのである。それだけでは説明にはならないので、魔術「治癒」の変化にもっと詳しく切り込んでいこう。

その前に涙石の指輪の話をひとつ。赤い涙石、青い涙石の両指輪は2でも登場している。しかし目を惹くほどの大ぶりだった石は随分と小ぶりになり、テキストにはカリムとカタリナの国名はない。長い時の間に石の産出量が減ったのか、割れた石を加工し直したため小さくなっていったのか。もはや産地すらわからなくなってはいるが、2の涙石のテキストには涙の神クァトとその伝承が登場している。


赤い涙石の指輪 、青い涙石の指輪(各テキスト一部抜粋)

:涙の神クァトは非業の死を遂げた者を悼み
血のような赤い涙を流す

:涙の神クァトは愛する人を亡くした者を哀れみ
清らかな青い涙を流す

以下同
この石はその涙が結晶になったものと言い伝えられている


3で明記されるがクァトは女神である。彼女と使徒モーンの話は3のNPCイベントに関連するので次回に。2の段階では性別ははっきりせず、クァトの鈴のテキストから闇と深い関連があるということしかわからない。


クァトの鈴

涙の神クァトの加護を受けた聖鈴
闇術専用の触媒で、奇跡には使えない

涙の神クァトは哀しみに寄り添う
慈愛の神という位置づけが一般的だが
一部では人を絶望の運命へと導く
悪神とされている


それにしても女神ベルカや、マヌスの欠片の娘たち、イザリスの魔女、黒教会の三姉妹など、とかく女は闇と混沌に関連が深い。太陽とは対の概念と言える月の力を持って産まれたグウィンドリンも暗月の女神として振る舞っていた。女と闇の親和性には理由が考えられるのだが、相当に長くなるのでまた別の記事にて。


さて、本題の「治癒の祈り」に戻ろう。まずはテキストをご覧いただきたい。


治癒の祈り

聖職者の基礎となる癒しの奇跡
身体を蝕む毒を浄化し完全に取り除く
その癒し効果は術者本人のみならず
周囲の者にも与えられる

この奇跡が見出された時期は比較的新しいようだ
どうやら純粋な奇跡ではないのかもしれない


まず時期が比較的新しいとは、雷の奇跡のように神族が竜狩りを行なっていた頃のような古い時代の奇跡ではないことを示している。そして純粋な奇跡ではないというのは、魔術が由来の奇跡だからである。

3に点字聖書があるように、奇跡は物語として記されたり語られるようである。「治癒の祈り」はダークソウル無印の時代にユルヴァが病み村の苦しむ人々に癒しを施した尊い行いが伝わりそれを記した奇跡なのではないだろうか。

しかし正しく伝わらなかったか、魔術師を崇めることを聖職者が嫌ったのか、小ロンドの魔術師ユルヴァの行いとは記されなかった。そして同じ女性である涙の神クァトが信仰され始めたことでクァトの行いと混同あるいは同一視されていったのではないだろうか。現に3では「治癒の涙」に名前が変わっている。

あるいは2のクァトの鈴が闇術専用の触媒で奇跡が使えないということは、ユルヴァ本人がクァトと呼ばれるようになった可能性も…?(しかし3では奇跡が使えるようになっている…)後述のファリスの例があるので全くの見当違いというわけではないかもしれない。

時の流れと離れた土地で伝承が変化や混同されるのは現実にもよくあることである。マデューラの篝火の名前は「果ての篝火」である。遠く、遠くの土地なのである。


もう一つおまけに。無印で登場した弓の英雄ファリスが2では狩の神エブラナとして崇められている。あの長いツバ帽子に憧れた子供たちが大きくなって語り継ぐうち、ファリスは名を変え、神格化され、彼の長ツバ帽は「狩人の帽子」として2に登場している。
そういえばブラッドボーンの狩人の帽子も前のツバが長く尖った特徴的な帽子でしたね。

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