ダークソウル考察「涙」その3 後編 (続イリーナとイーゴン)

必然たり得ない偶然など無いというのは筆者の好きなアニメの次回予告の一節なのであるが、クァトの鈴が闇の奇跡と相性が良いのも偶然ではない。なぜなら人を絶望の運命へと導く女神クァトの加護を受けた鈴なのであるから。鈴の秘密に触れつつ、イリーナとイーゴンの事の顛末を見届けよう。


2の時点でこの鈴は闇術専用の触媒であった。そして3では「蝕み」「ドーリスの蝕み」「生命狩りの鎌」の3つの奇跡に理力補正、その上にボーナス威力まで入るのである。

(現時点では筆者が生命狩りの鎌への親和性を上手く説明することは困難なので端折らせていただく。プリシラ、エルドリッチ、グウィンドリンとの関わりが深いという事に留めておく)

注目していただきたいのは「蝕み」である。文字通り「虫」が「食む」効果の奇跡である。


「蝕み」

深みの聖堂に伝わる暗い奇跡
蟲の群れを召喚し、敵を蝕む
深みに潜む蟲たちは、小さな顎に牙を持ち
瞬く間に皮膚を裂き、肉に潜り込み
それは激しい出血を伴うという


イリーナが言っていた「噛み苛む虫」とはまさにこの蝕みの蟲である。そしてその正体は人間性である。彼女は火防女になるために必須である人間性を受け入れることが出来なかったのである。


「火防女の魂」(ダークソウル無印より、道中落ちているものの抜粋)

火防女とは篝火の化身であり
捧げられた人間性の憑代である
その魂は、無数の人間性に食い荒らされ



イリーナにとってプレイヤーは自分を暗闇と孤独から救ってくれた、しかも一度火を継いで世界を救った「英雄様」なのである。それであのように必死に慕うのだ。
イーゴンはエスト瓶を所持していることから不死ではあるが灰の英雄ではないのだろう。セリフにも「お前も、火の無い灰という奴か」と当事者では無いような口ぶりである。

この後イリーナを庇護する限り、イーゴンは味方になると持ちかけてくる。前回語ったように、絶望的状況の打開をプレイヤーに託すのである。

プレイヤーがイリーナを火防女(もどき)の存在にすることができても、イーゴンは役目を終えたとばかりに彼女が居た牢で事切れている。またプレイヤーが闇の奇跡をイリーナに強いて語らせ廃人のようにしてしまった場合、イーゴンは彼女を祭祀場から連れ去り「腐った裏切りを許さぬ」と怒るモーンを体現したかのように激怒して敵対してくる。たとえ己の持つエスト瓶が空っぽであっても。

イーゴンは、仕えるべき聖女が別の者に心酔し、自分には成し遂げられなかった彼女の火防女化(もどきではあるが)の様子を側から見ているか、彼女が狂ってしまうという最も恐れていた事態を目の当たりにしてしまうか、どちらにせよ報われるとは言い難い結果を迎えるのである。

その未練からか、本編から更に時を経たDLCの舞台輪の都の一角で、彼は呻きの騎士として世界を彷徨っている。彼を倒すと「目隠しの仮面」をドロップするのだがその効果を見ると闇を恐れたイリーナを深淵へ突き落としかねない性能を持つものである。哀しいことに、どんなに時を経てもやはり彼の思いは報われなかった。これが絶望へと導かれたイーゴンの結末である。



目隠しの仮面

由来の知れぬ目隠しの仮面
小さな割れ目で視線は確保されている

闇攻撃の威力を高めるが
闇によるダメージも大きくなってしまう

紫鉄のそれは、どこか火防女の頭冠に似ているが
それは形ばかりのことだ

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